トレーニング理論 / 育成システム

「自分でメニューを組む」はなぜ失敗するのか? 成長を止める"主観"の罠と、設計をアウトソースする重要性

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自己分析の限界と、客観的なプランニングの重要性

トレーニングメニューを自分で考えると、どうしても「得意なこと」や「やりたいこと」に偏ってしまう。自分を客観視し、弱点に向き合うプログラムを自ら課すのは至難の業だ。成長のボトルネックとなる「主観のバイアス」を排除し、成果を最大化するために、「計画(プランニング)」を外部(コーチやシステム)に委ねるべき理由を解説する。

はじめに:その練習、ただの「偏食」になっていませんか?

「一生懸命練習しているのに、なかなか結果が出ない」
そう悩む人の多くが、ある共通の落とし穴にはまっています。

それは、「自分で考えたメニューをこなしている」ということです。
一見、主体性があって良いことのように思えますが、ここには大きな「主観の罠」が潜んでいます。

1. 脳は「楽な方」を選びたがる

人間は無意識のうちに、不快なものや苦手なものを避けようとします。
自分でメニューを組むと、どうしても以下のようなバイアスがかかります。

  • 得意な練習ばかりやる: 「打つのが好きだから」といってバッティングばかりし、地味なフィジカル強化や守備練習がおろそかになる。
  • キツい時に負荷を下げる: 「今日は疲れているから」と、自分への甘えが出て負荷をコントロールしてしまう。
  • 全体像が見えない: その日の気分で決めてしまい、年間を通した「期分け(ピリオダイゼーション)」ができていない。

結果として、栄養バランスの偏った食事のような「偏食トレーニング」になり、成長が頭打ちになるのです。

2. 「処方箋」を自分で書く難しさ

トレーニングメニューの作成は、医師が患者に薬を出す「処方箋」と同じです。

自分の体のどこが悪くて(課題)、どの薬(練習)を、どれくらいの量(負荷・回数)飲めば治るのか。
これを正確に診断するには、高度な専門知識と、「自分を他人ごとのように見る客観性」が必要です。

自分の背中が見えないように、自分の課題を完全に客観視して、適切な処方箋を書くことは、プロでも至難の業なのです。

3. 「計画」と「実行」を切り離す

では、どうすれば良いのでしょうか。
答えはシンプルです。「メニューを考える(Plan)」と「練習をやる(Do)」を分業することです。

  • Plan(設計): 信頼できるコーチ、トレーナー、あるいは客観的なデータに基づくシステム(AIなど)に任せる。
  • Do(実行): 提示されたメニューを、疑いなく100%の出力で遂行することに集中する。

「今日は何をやろうかな?」と悩むエネルギーをゼロにして、「どうやってこの課題をクリアしようか?」という実行の質に全エネルギーを注ぐ。
これが、最短で成長する人の思考法です。

計画と実行を分離することでパフォーマンスが上がる図解

計画と実行を分離することでパフォーマンスが上がる図解

結論:設計図は他人に任せろ

「自分で考える」ことは大切ですが、それは「どう工夫してやるか(How)」において発揮すべきです。
「何をやるか(What)」の設計図に関しては、思い切って「外部の脳(コーチやシステム)」を頼ってみてください。

主観というノイズを取り払い、自分に必要なことだけが並んだメニューを手にした時、あなたの成長速度は劇的に変わるはずです。