「理不尽」をすべて排除していいのか? 東北学院大・星監督が教える、社会で生き残るための『正しい免疫』のつけ方

現代のスポーツ指導において「理不尽」は撲滅すべき敵とされる。しかし、東北学院大を優勝に導いた星孝典監督は、あえて「踏ん張る経験(耐性)」の重要性を説く。なぜなら、一歩外に出れば、社会は理不尽なことだらけだからだ。
はじめに:「ホワイトな環境」の落とし穴
「選手にストレスを与えない」
「好きなようにやらせる」
近年、スポーツ界のホワイト化が進んでいます。
暴力や暴言の根絶は絶対条件ですが、その反動で「思い通りにいかない経験(ストレス)」まで排除してしまってはいないでしょうか?
東北学院大・星孝典監督は、優勝の裏側で、現代の学生に不足しているある能力への危機感を語っています。
それは、「理不尽に対する免疫(忍耐力)」です。
▼参照記事
東北学院大・星孝典監督(下)「甘えず、踏ん張ることも大切」
1. 「良い理不尽」と「悪い理不尽」
まず、ここを混同してはいけません。
× 悪い理不尽(ハラスメント)
指導者の暴力、人格否定、目的のない罰走。これは単なる加害行為であり、百害あって一利なしです。
〇 良い理不尽(逆境)
審判の誤審、不運なイレギュラーバウンド、努力したのに報われない怪我、社会の不条理。
星監督が伝えたいのは後者です。
社会に出れば、「自分は悪くないのに怒られる」「正論が通じない」といった理不尽の雨が必ず降ります。
温室育ちの選手は、この最初の雨で風邪を引き、心が折れてしまいます。
2. 「逃げ癖」をつけさせない
記事の中で星監督は、「ここで踏ん張れるかどうかが人生を左右する」と語っています。
苦しい練習や、納得いかない展開になった時。
「今の指導者はわかってない」「環境が悪い」と言って逃げるのは簡単です。
しかし、学生時代に「逃げる選択」を学習してしまった人間は、社会に出ても転職を繰り返したり、壁の前で立ち尽くしたりすることになります。
「状況は変えられない。でも、自分の態度は変えられる」
このマインドセット(グリット)を育てることこそが、野球部という組織が提供できる最大の教育価値です。
3. 本当の「優しさ」とは何か
転ばないように石を取り除いてあげるのが優しさではありません。
転んでも立ち上がれるように、足腰を鍛えてあげるのが優しさです。
星監督が「甘えず、踏ん張れ」と厳しく説くのは、学生たちが卒業した後、指導者のいない場所で一人で戦っていけるようにするためです。
「耐性」というワクチンを打って社会に送り出す。これこそが、指導者の最後の責任ではないでしょうか。
結論:嵐の中で踊る術を教えよう
「理不尽」という言葉を毛嫌いせず、正しく恐れましょう。
私たち指導者が教えるべきは、理不尽な嵐を避ける方法ではなく、「嵐の中でもダンスを踊る(前を向いて戦う)方法」です。
踏ん張った経験のある人間は、強い。
その強さは、AIにも代替できない、一生モノの武器になります。
