指導者論 / 世代間ギャップ

「熱血指導」が若者を潰す? 令和のZ世代を動かすのは、情熱ではなく『万歩計』のようなフィードバックだった

「頑張るのってダサくない?」「それやって何の意味があるの?」。現代のチームに蔓延する閉塞感と冷笑的な空気。最新データが示す若者の理想の上司像は、情熱的なリーダーではなく「丁寧に教えてくれる伴走者」だ。彼らはアットホームな距離感を嫌い、放置されることを恐れる。金間大輔教授が提唱する、感情(期待)を乗せずに事実だけを伝える「万歩計型フィードバック」とは何か? 熱量を強要せず、行動を積み上げさせるための新しい指導アプローチを解説する。

熱血指導と万歩計型フィードバックの対比イメージ
熱血指導と万歩計型フィードバックの対比イメージ

はじめに:「アットホーム」は褒め言葉ではない

「うちは家族みたいなチームだぞ」 良かれと思って言ったその言葉、実は若手選手や部下には**「重い」**と思われているかもしれません。

PIVOTの動画で金間大輔教授が示したデータによると、今の20代は「アットホームな職場」を避ける傾向にあります。 彼らが求めているのは、ウェットな人間関係(飲み会や精神論)ではなく、**「適切な距離感」と「静かな職場」**です。

これは、私たちが信じてきた「昭和・平成のチーム作り」の崩壊を意味します。 では、どうすれば彼らを動かせるのでしょうか?

1. 「任せて見守る」はただの放置

かつての名将は「お前の好きにやってみろ」と選手を信じて任せました。 しかし、今の若者にとってそれは信頼ではなく「放置(何をしていいかわからない恐怖)」と映ります。

データが示す理想の上司像は、「1から10まで丁寧に教えてくれる人」。 「自分で考えろ」と突き放すのではなく、横にいて一緒に画面(プレー)を見てくれる「伴走型」の指導が求められています。

これを「甘え」と嘆くのは簡単です。 しかし、正解のない時代を生きてきた彼らにとって、「正解(型)を教えてもらうこと」は生存本能なのです。

2. 感情を捨てよ、「万歩計」になれ

ここが最大のポイントです。 金間教授は、指導における「褒める」「叱る」の両方を否定しています。なぜなら、そこには「期待」という感情(熱量)が乗っているからです。

今の若者は、他人の感情を受け止めるキャパシティが飽和しています。 だからこそ、指導者は「万歩計」になるべきです。

熱血指導(×): 「お前ならできる! もっと頑張れ!」(感情・期待が重い)

万歩計指導(〇): 「今日は50回振れたね。OK」「次は肘を上げてみよう」(事実・行動の確認)

万歩計は怒りません。励ましもしません。 ただ淡々と「今のスコア(事実)」を表示するだけです。 しかし、人はそのスコアを見ると「あ、もうちょっと歩こうかな」と自発的に動くのです。

万歩計のように事実を伝えることで内発的動機が高まる仕組みの図解
万歩計のように事実を伝えることで内発的動機が高まる仕組みの図解

3. 熱量は「後から」ついてくる

「そんなドライな指導で、熱いチームが作れるか!」 そう思うかもしれません。私もそう思います。

しかし、順番が逆なのです。 まず「万歩計」のような淡々としたフィードバックで、「できた(行動した)」という事実を積み上げさせる。 その安心感と自信が土台になって初めて、彼らの内側に「もっと上手くなりたい」という小さな火(熱量)が灯ります。

最初からキャンプファイヤーのような炎を要求してはいけません。 まずは種火を守るように、静かに、頻繁に、事実だけを伝えること。

結論:毎日1分、事実を伝えよう

2時間の飲み会で語り合うより、毎日の練習で「ナイス」「今の動き、良かったよ」と1分間声をかける。 それを積み重ねることが、令和の時代の最強のマネジメントです。

情熱は、指導者がぶつけるものではなく、選手の内側から静かに湧き上がってくるのを待つものです。

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