部員は「お客様」なのか? 学校と指導者が直面する『サービス受益者』としての生徒と、教育のジレンマ
「部員はお客様(ユーザー)で、学校はサービス提供者(サプライヤー)なのか?」この問いは、現代の部活動指導に大きな波紋を呼んでいる。義務教育の中学、選択の余地がある高校、そして大人の契約に近い大学。カテゴリーごとに変化する「部員と学校の関係性」を整理し、ビジネスライクな契約関係と、教育的な師弟関係の狭間で揺れる指導現場の最適解を探る。
はじめに:部活動は「サービス業」になったのか?
「お金を払っているんだから、試合に出せ」
「指導が気に入らないから、学校を訴える」
近年、保護者や生徒からのこうした声が増えています。
これは、部活動を「教育の場」ではなく、「対価を払って受けるサービス」と捉える風潮が強まっている証拠です。
果たして、部員は「ユーザー(顧客)」で、学校・指導者は「サプライヤー(業者)」なのでしょうか?
この問いについて、中学・高校・大学の3つのカテゴリーに分けて整理してみます。
1. 中学校:教育の一環としての「非ユーザー」
義務教育下にある中学校では、部活動はあくまで「教育活動の一環」として位置づけられています(厳密には自主的活動ですが、実態として)。
- 関係性: 教育者 vs 生徒
- ユーザー度: 低い(10%)
ここでは、生徒は顧客ではありません。
「やりたくない練習はやらない」という顧客の自由よりも、「心身を鍛える」という教育的配慮が優先されます。
しかし、地域移行(クラブチーム化)が進むにつれ、この年代でも「会費を払うユーザー」としての意識が芽生え始めており、学校部活とのギャップが問題になっています。
2. 高校:選択的契約による「準ユーザー」
高校は義務教育ではありません。生徒は学校を選んで入学し、部活を選んで入部します。
特に私立強豪校の場合、関係性は複雑になります。
- 関係性: 契約者(学校の広告塔) vs 提供者
- ユーザー度: 中程度(50%)
スポーツ推薦で入学した生徒にとって、部活は「キャリア形成の場」です。
指導者に求められるのは、教育者としての顔と、彼らのキャリアを成功させる「プロデューサー(サービス提供者)」としての顔の両立です。
ここで「理不尽な指導」を行うと、それは契約不履行(ハラスメント)として厳しく断罪されます。
3. 大学:対等な「パートナーシップ」
大学スポーツは、大人の世界です。
多くの大学では、学生が主体となって組織を運営し、指導者はそれをサポートする立場になります。
- 関係性: パートナー(共同運営者)
- ユーザー度: 高い、あるいは対等(100%)
ここでは、指導者は「監督」というより、「雇われたGM(ゼネラルマネージャー)」に近い感覚になります。
部員(学生)は、自分たちの成長のために指導者の知識や環境を「利用(使用)」するユーザーであり、同時に組織を支える運営者でもあります。
「指導者が偉い」という上下関係は消滅し、互いにリスペクトし合う契約関係が成立します。
結論:「お客様」ではなく「共創者」へ
「部員はお客様か?」という問いへの答えは、「イエスであり、ノーである」です。
時代は変わりました。指導者が一方的に教え諭す時代は終わりました。
しかし、単なる「サービス提供者」に成り下がっては、教育の価値(人間形成)は失われます。
目指すべきは、指導者と部員が、勝利や成長という共通のゴールを目指す「共創者(パートナー)」になることです。
「与える・与えられる」の関係を超えたところに、新しい部活動の未来があるはずです。
