一方的に引っ張るリーダーシップから、相互作用でプロセスを回すリーダーシップへの変化を示すイメージ
組織論 / リーダーシップ

引っ張るだけがリーダーではない。型を捨て「プロセス」を回す、予測不能な時代のリーダーシップ論

2026. 04. 09約10分で読めます
#リーダーシップ#組織論#プロセス#フォロワーシップ#役割外の行動#主体性#心理的安全性#人間力

「俺についてこい」という強いリーダー像は、もはや過去のものだ。経営組織論の観点から見ても、リーダーシップの本質とは「個人が持つ先天的な力」ではなく、目標に向かってフォロワーの行動を促す「プロセス(相互作用)」である。正解や型に依存する思考停止の罠を抜け出し、チームに「役割外の行動(主体性)」を自然発生させる、これからの時代のリーダーシップを解説する。

はじめに:あなたが思い描く「リーダー」の姿とは?

組織のリーダーと聞いて、あなたはどのような姿を想像するでしょうか。先頭に立って「俺についてこい!」とメンバーを引っ張る姿。あるいは、圧倒的なカリスマ性で全員に指示を出し、完璧に統率する姿でしょうか。

もしそうだとしたら、少しOS(考え方)をアップデートする必要があるかもしれません。神戸大学大学院教授の鈴木龍太氏が語る「リーダーシップの科学」によれば、現代におけるリーダーシップの定義は、私たちが固定観念として持っている「強い個人の力」とは全く異なるアプローチへと変化しています。

▼参照動画:【リーダーシップの科学】リーダーシップは身につけられる/「型化」の落とし穴/リーダーシップに正解はない

The Process of Leadership(リーダーシップのプロセス)

従来型

リーダー(指示)
フォロワー(服従)

一方通行の指示・命令

現代型

「プロセス」の円

リーダー
(環境設計・価値の共有)
双方向
フォロワー
(自律・役割外の行動)

リーダーシップが個人の力ではなく、フォロワーとの双方向のプロセスであることを示す図解

1. リーダーシップとは「能力」ではなく「プロセス」である

かつて、リーダーシップは個人のカリスマ性や「先天的な能力」として語られがちでした。しかし現代の組織論において、リーダーシップとは「集団の業績を達成するためにフォロワーの行動を促す『プロセス』」と定義されています。

つまり、リーダーが一方的に発揮する「力」ではなく、リーダーとフォロワーの間のやり取りで生まれる「相互作用」こそがリーダーシップの正体なのです。「どうすれば自分が強いリーダーになれるか」と自分の内側ばかりを見るのではなく、「どうすればフォロワー(選手や部下)が自律的に動いてくれる環境を作れるか」というプロセスに目を向けること。ここが、リーダーシップの出発点になります。

2. 「型」にはめることの恐ろしい落とし穴

世の中には、「サーバント型」や「ビジョン型」など、様々なリーダーシップの「型」を紹介する本が溢れています。しかし、鈴木氏も指摘するように、この「型」には大きな罠が潜んでいます。

「このやり方(型)を使えばうまくいくはずだ」と思い込んでしまうと、人間は目の前のメンバーの個性を観察すること(内観と他者への関心)をサボり始めます。これは、以前の記事でお話しした「ルーティンが目的化して脆くなる罠」や「外からの情報(ノウハウ)は問題を解決しない」という真理と全く同じです。

相手は感情を持った人間であり、状況は常に変化します。20個の「型(アプリ)」を持っていたとしても、最終的に求められるのは、その型を捨てる勇気と、「目の前のこの選手には今、何が必要か」をゼロベースで問い続ける強靭な思考力(OS)なのです。

3. 「役割外の行動」を引き出せるか

大量生産の時代であれば、リーダーが明確な正解を示し、メンバーに「言われた役割をきっちりこなさせる」ことが最も効率的でした。しかし、正解がない現代(あるいは予測不能なスポーツの試合中)において、リーダーがすべてを指示することは不可能です。

今、組織に最も求められているのは、フォロワーの「役割外の行動」です。「誰の仕事でもないけれど、チームのために拾っておく」「マニュアルにはないけれど、ここは自分がカバーに入る」という、指示されていない主体的な行動の連続。

これらを引き出すには、「交換関係(給料を払うからやれ、怒られるからやれ)」ではなく、「価値の共有(このチームで勝つことに意味がある)」という内発的動機付けが不可欠です。

vlog:リーダーシップの科学

結論:正解のない海へ、共に漕ぎ出そう

「これをしておけば正解」というリーダーシップの特効薬は存在しません。

だからこそ、リーダーは「正しいことを言う評論家」であってはならないのです。自らが泥臭くプロセスに没頭し、時には失敗をさらし、メンバーとの間に心理的安全性の高い「たわいもない余白」を作る。

完璧なリーダーを演じるのをやめましょう。「俺も分からないから、一緒に考えよう」。そんな余白とご機嫌な空気(環境)を持ったリーダーのもとでこそ、メンバーは初めて自責の念を持ち、期待以上の「役割外の行動」を起こし始めるのです。

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