はじめに:あなたが思い描く「リーダー」の姿とは?
組織のリーダーと聞いて、あなたはどのような姿を想像するでしょうか。先頭に立って「俺についてこい!」とメンバーを引っ張る姿。あるいは、圧倒的なカリスマ性で全員に指示を出し、完璧に統率する姿でしょうか。
もしそうだとしたら、少しOS(考え方)をアップデートする必要があるかもしれません。神戸大学大学院教授の鈴木龍太氏が語る「リーダーシップの科学」によれば、現代におけるリーダーシップの定義は、私たちが固定観念として持っている「強い個人の力」とは全く異なるアプローチへと変化しています。
▼参照動画:【リーダーシップの科学】リーダーシップは身につけられる/「型化」の落とし穴/リーダーシップに正解はない
The Process of Leadership(リーダーシップのプロセス)
従来型
一方通行の指示・命令
現代型
「プロセス」の円
(環境設計・価値の共有)
(自律・役割外の行動)
リーダーシップが個人の力ではなく、フォロワーとの双方向のプロセスであることを示す図解
1. リーダーシップとは「能力」ではなく「プロセス」である
かつて、リーダーシップは個人のカリスマ性や「先天的な能力」として語られがちでした。しかし現代の組織論において、リーダーシップとは「集団の業績を達成するためにフォロワーの行動を促す『プロセス』」と定義されています。
つまり、リーダーが一方的に発揮する「力」ではなく、リーダーとフォロワーの間のやり取りで生まれる「相互作用」こそがリーダーシップの正体なのです。「どうすれば自分が強いリーダーになれるか」と自分の内側ばかりを見るのではなく、「どうすればフォロワー(選手や部下)が自律的に動いてくれる環境を作れるか」というプロセスに目を向けること。ここが、リーダーシップの出発点になります。
2. 「型」にはめることの恐ろしい落とし穴
世の中には、「サーバント型」や「ビジョン型」など、様々なリーダーシップの「型」を紹介する本が溢れています。しかし、鈴木氏も指摘するように、この「型」には大きな罠が潜んでいます。
「このやり方(型)を使えばうまくいくはずだ」と思い込んでしまうと、人間は目の前のメンバーの個性を観察すること(内観と他者への関心)をサボり始めます。これは、以前の記事でお話しした「ルーティンが目的化して脆くなる罠」や「外からの情報(ノウハウ)は問題を解決しない」という真理と全く同じです。
相手は感情を持った人間であり、状況は常に変化します。20個の「型(アプリ)」を持っていたとしても、最終的に求められるのは、その型を捨てる勇気と、「目の前のこの選手には今、何が必要か」をゼロベースで問い続ける強靭な思考力(OS)なのです。
3. 「役割外の行動」を引き出せるか
大量生産の時代であれば、リーダーが明確な正解を示し、メンバーに「言われた役割をきっちりこなさせる」ことが最も効率的でした。しかし、正解がない現代(あるいは予測不能なスポーツの試合中)において、リーダーがすべてを指示することは不可能です。
今、組織に最も求められているのは、フォロワーの「役割外の行動」です。「誰の仕事でもないけれど、チームのために拾っておく」「マニュアルにはないけれど、ここは自分がカバーに入る」という、指示されていない主体的な行動の連続。
これらを引き出すには、「交換関係(給料を払うからやれ、怒られるからやれ)」ではなく、「価値の共有(このチームで勝つことに意味がある)」という内発的動機付けが不可欠です。
vlog:リーダーシップの科学
結論:正解のない海へ、共に漕ぎ出そう
「これをしておけば正解」というリーダーシップの特効薬は存在しません。
だからこそ、リーダーは「正しいことを言う評論家」であってはならないのです。自らが泥臭くプロセスに没頭し、時には失敗をさらし、メンバーとの間に心理的安全性の高い「たわいもない余白」を作る。
完璧なリーダーを演じるのをやめましょう。「俺も分からないから、一緒に考えよう」。そんな余白とご機嫌な空気(環境)を持ったリーダーのもとでこそ、メンバーは初めて自責の念を持ち、期待以上の「役割外の行動」を起こし始めるのです。


