「運も実力のうち」と「実力も運のうち」。勝者が持つべき、たった2つの"使い分け"
「運も実力のうち」という言葉は、準備の重要性を説くポジティブな言葉だ。一方で、サンデル教授が提唱する「実力も運のうち」は、謙虚さを促す戒めの言葉である。似て非なるこの2つの言葉は、どちらが正しいのか? 答えは「場面による使い分け」にある。苦しい時は前者を、勝った時は後者を。一流のアスリートが自然と行っている、メンタルコントロールの極意を解説する。
はじめに:言葉のベクトルが逆
日本語には「運も実力のうち」という有名なことわざがあります。そして最近、マイケル・サンデル教授などが提唱しているのが「実力も運のうち」という考え方です。
この2つ、言葉の並びは似ていますが、エネルギーの向き(ベクトル)は真逆です。
1. 「運も実力のうち」= 引き寄せる力(Agency)
これは、「主体性」の言葉です。
- 「運は待つものではなく、準備した者に訪れるチャンスだ」
- 「日頃の行いや努力が、最後のラッキーを呼び込んだのだ」
つまり、結果(運)をコントロールしようとする攻めのマインドです。松井秀喜選手が5打席連続敬遠の後に、悔しさを押し殺して一塁へ走った姿勢。あれが後の成功(運)を引き寄せたと言われるように、「運さえも自分の力で手繰り寄せてやる」という気概がここにはあります。
2. 「実力も運のうち」= 受け入れる器(Humility)
対してこちらは、「謙虚さ」の言葉です。
- 「今の実力があるのは、環境や遺伝に恵まれたおかげ(運)だ」
- 「たまたま才能が評価される時代に生まれただけだ」
これは、自分の力を過信せず、周囲への感謝を忘れないための守りのマインド(戒め)です。成功して天狗になりそうな時、この言葉がブレーキとなり、人間的な成熟を促します。
3. いつ、どちらを使うべきか?
一流の選手は、この2つを無意識に使い分けています。
苦しい時・挑戦する時 → 「運も実力のうち」
不運を嘆かず、「運を引き寄せるまで努力してやる」と自分を鼓舞する。
勝った時・成功した時 → 「実力も運のうち」
「俺がすごい」と傲慢にならず、「運が良かっただけ」と謙虚に振る舞い、次の敵を作らない。
最悪なのは、この逆をやってしまうことです。負けた時に「運が悪かった(実力も運のうち)」と言い訳し、勝った時に「俺の実力だ(運も実力のうち)」と威張る。これでは成長も信頼も止まってしまいます。
結論:アクセルとブレーキ
「運も実力のうち」は、成長するためのアクセル。
「実力も運のうち」は、道を踏み外さないためのブレーキ。
どちらも必要です。今の自分の状態に合わせて、この2つのカードを切り替えられる人こそが、真の「強い人」なのです。
